トリクルダウン詐欺に御用心

ここの方々は分かっていらっしゃるので、寄稿する意味が無い気もしますが……まあ、くらえもんさんが投稿された『TPP暫定全訳』の口直しにでもどうぞ。

三橋貴明氏の2015/1/6(水)のブログ『トリクルダウンはあり得ない』を読みまして、「資本移動の自由がー、対外投資がー、対外証券投資がー、富裕層減税がー、デフレがー」では面白くないので、トリクルダウン仮説の歪さを面白可笑しく書いてみました。

 

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金は天下の回りもの。
収入を得るには誰かがお金を使い、そして得た収入を使って生活を営みます。
そんな巡り巡って旅するお金さん……必要だし、欲しいので、誰しも金寄せに熱が入るもんさ。
「お金さん、お金さん、どんどんウチへ泊りにおいでよ!」

ところで最近、ある話が巷で噂となっております。
それはどうやら

〝何もせず待っているだけで、どんどんお金が転がり込んで来る〟んだとか。

その話とは、トリクルダー……。

 

トリクルダウンとは何かと言いますと、一つの仮説になります。それは次の通りです。

「富裕層や大企業を富ませると、富が国民全体にしたたり落ち、経済が成長する」

ここはまあ、経済学的な用語や説明なんてすっ飛ばして話を展開して行きましょう。
さて、上記のような仮説では遺憾なことに、過程はさることながら、前提条件が明示されておりません。
化学反応で例えるならば、操作手順が書かれていないばかりか、反応条件(温度、圧力、pH、溶媒、触媒の有無など)が省かれているわけです。
料理(例えばカレーの作り方)ならば、

「肉と野菜と香辛料と小麦粉と水と塩で、カレーが作れる」

となります。レシピなんてありません。
どうぞ料理をしない皆さん、是非これでカレーを作ってみて下さい。カンニングや市販のカレールゥを使うという〝インチキ〟は無しです。

高確率で、まずいカレーの完成ですね。料理をする人でも〝インチキ〟を活用する方は危ういかもしれません。

 

それでは少し言葉を補って、先程の仮説を言い換えてみましょう。

「富める者が富めば富む程に、〝魔法が発動して〟富める者から貧しい人へ富が循環し、全ての者が豊かになり、国全体が栄える」

 

何かが抜けていますね……ああ、〝富ませる〟という他動詞でしたね。それでは修正致しましょう。

富める者を優遇して富ませれば富ませる程に、〝魔法が発動して〟富める者から貧しい人へ富が循環し、全ての者が豊かになり、国全体が栄える」

 

さて、トリクルダウンを起こすための〝魔法が発動する〟条件とは何でしょう。

それは、儲けた金の亡者が、お金を豪勢に使うか、貧しい人へ分け与えた場合ですね。

お金を使うにしても金の亡者ですから、自身が手に入れたい物のためか、より金を儲けるための投資に使いますね。つまり、自己満足か見栄のためか、周囲からもっともっと金を巻き上げるための投資、になります。

貧しい人へ分け与えるにしても、イメージ戦略や節税のためです。
つまり、ええカッコしいや評判を偽装するためとなります。

要は自分がより一層得をするためにしか金を使わないってことですね。

この条件では、どうやら周囲から金を巻き上げることが一層優位になる循環となりそうです。

 

それじゃあ、富める者は極悪人じゃないか! と非難が来そうですが……どこかに間違いでもありました? 真実って恐ろしいですね。

 

 

 

では、別の成り立つための前提条件を考えてみますと、こうなります。

全ての裕福な人の人格が優れている。

まあ、とっても倫理的かつ道徳的! 全く経済と関係無い話ですね。
詳しく見て行きましょう。

金を使うにしても他人のため、分け与えるにしても他人を成長・自立させるため。

これでは様々な物が出て行く一方です。

したがって、自身が成長すること、入りと出の塩梅を上手く調整すること、人心掌握により協力体制を築くことも必要になりますね。

これを一時的に行うだけでは駄目ですから、上手い具合に継続して行く手腕も要しますね。

 

さあ、流石に片方の性質しか持ち合わせていない人は極少数でしょうから、大半の人は〝玉石混交状態〟です。どちらの振る舞いも取るわけですね。
しかし、腕が良い人や技量の優れた人というのは、どんな分野でも少数です。というわけで、難しい方を追求し続けている方は、とても少いことになりますね。ええ、異端児ですよ。

して、簡単で楽なのはどっちでしょう?

 

更に、トリクルダウン仮説の最初の部分、即ち〝富める者を優遇して〟一層儲けさせる……これは、何かの介入がありますね。政府による制度上・税制上の優遇ってやつです。

税制上の優遇ですから、皆から集めた税金を裕福な人に配るか、裕福な人から集める分を減らすか、貧しい人から集める分を増やす、そんな介入方法を指しております。

[消費税+輸出戻し税]、所得税の累進性緩和、法人税減税、外形標準課税の拡大、消費税増税がそれらに相当しますね。

要は、弱者から金を搾り取って、強者へたんまりと金を渡すわけです。
更に、弱者が成長するための機会や環境を奪い、強者がより強くなるための機会や環境を整えるということも含まれております。

どこかで聞いた話かと思えば、中世以前の歴史やお話とかによく出て来ますね。どうやら進化、進歩しているんではなくて、退化も劣化もしているようです。

 

これらを踏まえると、トリクルダウン仮説は次の様に訂正しなくてはなりません。

「富める者を優遇して、富める者が貧しい人々から強奪すればする程、富める者から貧しい者へと富が循環し、貧しい者も豊かになり、国全体が発展する」

 

トリクルダウンなんて、成立するわけがありませんね。

えっ? 上記は「社会の金の総量が変わらない」という前提であることを断っていないのはズルいって?

いえいえ、ご安心下さい。富める者ほど非常に有利な状態であり、弱者を虐げて富める者を優遇して援助するための介入があるのですから、金の総量が増えようとも減ろうとも、結果が変わることはありません。

トリクルダウンが起こることは無い!

【反論】いやいや、富める者が倫理的ならば……
【答】現在倫理や道徳の説法ではなく、経済と金儲けの話をしております。どうぞ皆さんが倫理的、道徳的に振る舞うよう、あなたは布教にお努め下さいませ。その分あなたの儲けは減りますが。

 

それでは、どうやったら自己チューな富める者に、世のためにお金を使わせることが出来るようになるでしょうか。自分チューな富める者は、利に聡く、偉ぶってデカい面をしたいわけです。
ここで登場するのは彼の有名な格言。世渡りには必須ですね。

豚も煽てりゃ……空を飛ぶ!?

つまり、他人のために金を使えば儲けることも出来る制度(国内への設備投資減税とか)、弱者の成長や自立のため(正規雇用の拡大とか)に分け与えたりすれば、煽てて貰える制度が必要になります。
また、非倫理的な者や不正者は損をする制度も組み合わせたいですね。

人格的に優れた人は、称賛される行動を自然と取る確率も高いですから、こういった制度が無くても構わないかもしれません。
しかしながら、やっぱり後押しや称賛があれば嬉しいのが人情。

したがいまして、善悪貧富老若男女問わず、良い方向へ導きたければ、後押しをする制度は必要です。

 

「経済は倫理的である」という前提で、経済制度や経済政策を組むのはやめにしましょう。
経済は決して倫理的ではありません。経済は、先ず以て経済の論理に従います。

 

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【トリクルダウン】
「富裕層が経済的に豊かになることで、最終的には貧困層も豊かになり、全体に富が行き渡る」という経済学の仮説。

■解説■
第一に、経済学は経済人、即ち「何をおいても経済合理性をひたすら優先・追求する人」を前提として論を展開している。

しかしながら、トリクルダウン仮説(理論)においては、経済人が〝とても倫理的〟であることを前提とした論を展開している。
つまり経済人ではなく、経済合理性よりも倫理性を重視した人が前提となってしまっている。

したがって、この仮説を持ち出してくる場合には、自身の経済合理性を追求するための方便、即ち煙に巻くことや詐欺を目的としているので、用心する必要がある。
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  • コテヤン@どうやら管理人
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「トリクルダウン詐欺に御用心」のコメント一覧

  1. 1
    コテヤン@どうやら管理人 コテヤン@どうやら管理人  :

    これは面白い。
    主流派経済学なんてのは詐欺の常套句のようなもので、トリクルダウン仮説はその最もたるものですね。
    かのトリクルダウンを唱えていた竹中平蔵氏ですら、テレビで「トリクルダウンなんてあるわけねーだろ(チッ)」と仰ってましたからw
    私の来週の進撃さんへの寄稿も、実は主流派経済学と新自由主義を強烈に批判したものです。
    ・・・シンクロしてる(?!)

  2. 2
    やまねろん  :

    >>コテヤン@どうやら管理人さん
    楽しんで頂けたならば本望です。真面目な話だからこそ、面白さも必要だと思いまして。

    へいぞー・タケナカのような主流派経済学や新自由主義を喧伝する人って、押し売りセールスマンなんだと捉えています。騙せりゃ儲けもんってくらいの心持ちで、色々手広くやっているかと。

    >来週の進撃さんへの寄稿
    どんな話の展開か楽しみにしています。

  3. 3
    holyfirework 灯火  :

    面白い。そして、とても分かりやすいです。
    そもそも、トリクルダウンが絶対に成立するはずがない暴論なのは、普通の人がちょっと考えれば、わかることなのです。
    だって、お金が余ったら、あなたはどうしますか?
    「しょうがないな。使い切れないから、寄付でも何でも良いからばら撒くか」なんて考えますか?
    普通は、貯金しますよね?金持ちも考えることは同じです。
    従って、お金は、自然に循環することはなく、トリクルダウンも成立はしないのです。

  4. 4
    やまねろん  :

    >>灯火さん
    そうなんですよね。ちょっと考えれば分かるし、どう考えてもおかしくないか? という疑念を抱いている方は多いと思うんですよ。
    しかしながら、日本的な良さの裏返しで、「私に非があるかもしれない」「勉強不足の所があるかもしれない」という、成長して行くためには良い性質が、自信の無さや反論のし辛さ、質問のし辛さに繋がっていると思います。

    >金持ちも考えることは同じです。
    個人や企業は、それが基本の振る舞いですよね。
    一般的に、知能や知識、社会性が優れている人ほど嘘が上手く、嘘つきですから、「金持ちの方が灰汁どさも上」と捉えていて問題ないかと思います。悪辣な振る舞いとはならぬ様努める方も、勿論いますけど。

  5. 5
    holyfirework 灯火  :

    >>やまねろんさん

    全く同感です。

    >一般的に、知能や知識、社会性が優れている人ほど嘘が上手く、嘘つきですから、「金持ちの方が灰汁どさも上」と捉えていて問題ないかと思います。

    日本人でお金持ちと言えば、ほぼ大企業経営者のことですが、渡辺美樹氏や三木谷浩史氏、柳井氏など、最近は経営者のモラルハザードと政権への露骨な擦り寄り、そして政治への影響力行使が目立っていますね。

    日本人は、もっと政治に関心を持ちつつ、財界と癒着する議員を選挙で落としつつ、教育でもっと倫理と道徳、そして金融教育を行うべきですね。英語教育強化をやっている場合じゃないです。