日本銀行、マイナス金利導入へ

一月二十九日、日本銀行は遂に、「禁じ手」と言われるマイナス金利を導入しました。
マイナス金利は本来、金融機関の収益を悪化させ、金融を引き締める作用があります。
そのため、その効果を避ける為に、スイスなどで採用されている階層方式がとられました。
つまり、マイナス金利の適用範囲をごく一部に限定し絞ったことで、金融機関への直接的な影響を抑えたのです。
これにより、金融機関に対応するための猶予を与え、また、階層制にすることで、量的質的金融緩和との整合性を保ったと見られます。

こちらが、日銀が示した、今回のポイントになります。

日銀マイナス金利導入 決定のポイント
1月29日(金)13時01分配信 トレーダーズ・ウェブ

本日の決定のポイント

●「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入する。
・日銀当座預金に-0.1%のマイナス金利を適用。今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。
・欧州(スイスなど)で採用されている階層構造方式とした。具体的には3つの階層毎に、プラス・ゼロ・マイナス金利とする。

●「量」「質」に「マイナス金利」を加えた3つの次元で、追加緩和が可能なスキームとした。
・イールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく。
・3つの次元の緩和手段を駆使して、2%の早期実現を図る。

つまり、2%のインフレターゲット達成を目指して、今までの量的質的金融緩和に加えて、今回新たにマイナス金利という手段を加えた。今後も日銀は目標達成の為に躊躇なくあらゆる手段をとっていく、という日銀の決意と覚悟を、マイナス金利というサプライズをもって表明したものといえるでしょう。

それでは、今後の日本経済は、日銀の意図したように進んで行くのでしょうか。答えはNOです。
現在の日本は、長期デフレから脱却しきれておらず、供給が需要を10兆円以上も上回るというデフレギャップの状態にあります。つまり、物を作ったところで売れないのです。
だから、企業は投資を行いません。投資を行わないということは、資金需要がないということです。つまり、借り手がいないのです。
こんなことを書くと、「いやいや、そんなことはない。借りれなくて困っている中小企業はたくさんあるんだから、そこに貸せばいいじゃないか」という人が必ず出てきますが、金融機関も商売でやっているので、誰でもいいから借りて下さいという状況ではありません。
返せないような借り手は、お客では無いのです。中小企業への積極融資がいかに危険なものかということは、鳴り物入りで設立された新銀行東京の末路が物語っています。
同じ過ちを繰り返してはならないのです。

それでは、借り手のいない巨額マネーは、何処に向かうのでしょうか。
マイナス金利導入によって、金融機関は収益が悪化することになります。
利鞘の改善も望めず、貸し付けでの収益も見込めない中、金融機関の取るであろうシナリオとしては、次のようなものがあります。

①手数料収入の増加

手数料の大きい投資信託販売に力を入れることになるでしょう。
特に手数料の大きい投資信託を、「おすすめ商品」として全力でプッシュしてくると思われます。また、振込手数料やATMの手数料なども値上げする可能性があります。
すぐではないでしょうが、消費税増税時にやる可能性が高いと思います。

②株・債券への投資

まずは、国債が消えるでしょう。その次はJ-reatかと。
クジラと呼ばれた公的資金に続いて、民間金融機関も、リスク資産を大規模に買い入れることになります。そしてまた、株価は上がることになります。実体経済とかけ離れた株価は、いずれ中国のように調整されることになりますが、おそらく、選挙前までは保つでしょう。
安倍政権にとってはウハウハでしょう。今回の真の狙いは、ここにあるのかもしれません。

③新たな収益源の開拓

アメリカでは、口座維持管理手数料というものがあり、銀行の収益源として長年貢献してかた実績があります。その導入のための布石かもしれません。もし導入されるとしたら、時期はやはり、消費税増税時でしょう。

どのシナリオであっても、一般国民から見れば、どれもろくなものではありません。
それでは、国民目線から見た今回のポイントは、どのようになるのでしょうか。
こちらになります。

①従来の異次元緩和の限界を示した

黒田日銀のこれまでの金融緩和は、「量的質的金融緩和」という言葉に代表されるように、資金をジャブジャブ流し入れることによってインフレを起こさせるという、いわゆる『貨幣数量説』理論に立脚した政策でした。安倍総理が国会で、「デフレは貨幣現象」と言ったことが、奇しくも、その本質を表わしています。
黒田日銀はこれまで!毎年80兆円を超える金額を供給し、国債や市中の債券等を買い入れてきましたが、これ以上の量的緩和の拡大は見送りました。市中から国債が消えかけていることや、インフレ率の低迷などから、これまでも効果は疑問視されてきましたが、今回日銀は行動でその限界を認め、量的緩和路線から金利路線へと舵を大きく切ったと言えます。

②金融機関の収益悪化

異次元緩和には、付利と言って、お金を利息も付けて金融機関にプレゼントしていました。
その額はおよそ2580億にのぼると言われています。
そこから今度は数百億(メガバンク)の減益になると言われています。
では、どうするか。ろくなシナリオがありません。かと言って、厳しくしずぎると潰れてしまいます。公的資金注入なんてことになったら、損をするのは国民です。従って、大きなマイナス金利にはできません。マイナス金利にも、限界はあるのです。

③株価狂騒曲、再び

公的資金に続いて今度は、銀行マネーが株価を釣り上げることになるでしょう。
中国やEUなど、世界同時デフレの様相を呈する中、日本だけがいち早く株式市場で高値を付けてデフレ脱却を宣言し、アベノミクスの成果だと全世界に宣言する格好のチャンスでもあります。安倍総理は選挙で完勝し、絶大な議席と絶対権力を手に入れる可能性があります。

④金融機関のビジネスモデルの崩壊

利鞘で日銭を稼ぐという、これまでの金融機関のビジネスモデルが厳しくなってきています。もはやそれだけではやっていけないし、これからはどれだけ本業以外で稼げるようになるかが大切になってくるでしょう。
また、経営体力が元々弱く、本業以外の儲けもあまり期待出来ない地銀にとっては、収益の確保に悩まされることになり、地銀の再編を促すことになるかもしれません。
最悪の場合、地方金融の崩壊→地方経済の崩壊→景気への悪影響となる可能性もあります。

⑤ツケは利用者へ

マイナス金利政策は、規模の大きいメガバンクほど、実損額が大きくなる仕組み。
利鞘の悪化や運用状況悪化により、地銀なども収益が悪化する。
そのため、全金融機関が一斉に、口座維持管理手数料の新設や、手数料アップ、ATMの利用料アップへと動く可能性が高い。すぐというわけではないだろうが、いずれ、金融機関はツケを利用者である国民に回そうとするだろう。

⑥銀行、負のスパイラルへ

融資で儲けられない→投資信託・保険の手数料収入に依存する収益構造へ→人材を投資信託・保険分野に重点配置せざるを得ない→融資分野が人材不足に→融資で儲けられない
これが、金融機関が今後陥りそうな、負のスパイラルです。
金融機関の株価は、これから下がっていくでしよう。もう下がってますがw

⑦日本経済への良い影響は、あまり無い

巷では、金融機関に貸し出しを促す為のモノ!という解説が多いが、それは実現しない。
また、株価が上昇しても、景気回復には繋がらない。
円安誘導策でもあるので、輸入物価上昇によるスタグフレーションが起きる可能性がある。
他国も通貨安政策を行い、出口のない不毛な通貨安戦争を引き起こし、好調だった輸出産業が大打撃を受ける可能性もある。

こんなところでしょうか。
結局のところ、いくら金融緩和しても、それだけではダメなのです。
それは、今までの日本経済と、ひと足早くマイナス金利を行ったEUが証明しています。
金融機関は金融機関で、与えられたお金の使い途に困り、「神様、どうか銀行に優良な貸出先をお与え下さい」と思っているでしょう。
では、どうすれば良いのか。
政府が財政出動を行って、仕事をばら蒔けば良いのです。
最早、金融政策一本足打法の時代は終わりました。
これからは、財政政策が経済政策のメインを張る時代になったのです。


このユーザーがいいねしています

  • コテヤン@どうやら管理人
  • holyfirework
  • noranekoma

「日本銀行、マイナス金利導入へ」のコメント一覧

  1. 1
    コテヤン@どうやら管理人 コテヤン@どうやら管理人  :

    大変わかり易い解説だったかと思います。
    後個人的なポイントとしてはEUのことで

    >「神様、どうか銀行に優良な貸出先をお与え下さい」と思っているでしょう。

    がややウケしたのとww
    あとEUは財政出動ということも縛られておりますが、日本はそうじゃないんだからさっさと財政出動やったらいいのに…という話ですね。
    おそらく今年の日本の経済状況は去年よりも悪くなるでしょうし、消費税増税も控えているわけで…
    ここはポーンと年間10~30兆円程度の補正予算を複数年度にわたって実行するべき局面なのになぁ…と。

  2. 2
    holyfirework 灯火  :

    >>コテヤン@どうやら管理人さん

    あ、ちなみに、そう思ってるのは、日本の金融機関ですw
    EUの金融機関は、自国にこだわることなく、他国の株やファンドに躊躇なく投資します。
    だからこそ、負け組国家は資本流出で立ち直れないほどの大打撃を受けるのです。
    TPPで同じような資本の自由化をやったら、日本もEUの二の舞いになります。

    異次元の金融緩和で、毎年80兆刷ってもインフレにならないと証明されましたからね。
    今こそ、大規模な財政出動のチャンスなんですよ。
    80兆というのは、国家予算の約八割にも上ります。
    消費税廃止だって、公共事業だって、給付金だって、何でもバンバン出来ますよ。

  3. 3
    コテヤン@どうやら管理人 コテヤン@どうやら管理人  :

    >>灯火さん
    あぁ、なるほど。確かに。

    希望としては公共事業と消費税廃止をぉぉぉw
    リニアの東京、名古屋、大阪の同時開通でリニアに乗りたいのですw

  4. 4
    holyfirework 灯火  :

    >>コテヤン@どうやら管理人さん

    簡単なことですね。
    おまけに、山陰と四国に新幹線を整備して、新幹線で日本一周が出来ますよ。
    総理大臣の意思一つで可能です。
    私が総理なら、やりますがww