税制改革によってケインズ派は復活できる

世界的な需要不足の流れを受けて、IMFやOECDが先進各国へ財政支出を促す発言をしています。財政出動による景気対策を主張するケインズ派の人たちにとってみると追い風の状況ですが、財務省など財政再建論者が必死にそれを封じ込めようとしているようです。債務拡大による経済モデルは限界だというのです。ゆえに一般にケインズ派は限界と思われています。

しかし、なぜ以前は機能していたケインズ的な財政出動が機能不全に陥っているのでしょうか。いわゆる識者の多くは何も語りませんが、それはおカネの流れを考えると簡単に理解できます。

経済成長期の社会において不況になった場合、政府が国債を発行して通貨を調達し、財政出動を行ないます。たとえば公共工事を行うと、そのおカネは国民の総所得を押し上げて、民間消費を押し上げるます。これにより不況で低下していた生産設備の稼働率が上昇して失業を解消すると同時に、財の生産量を増大させます。この場合、財政出動したおカネは消費へ向かい、やがて消費と生産の循環通貨(フロー)を増大させます。所得税や法人税など主たる税収のほとんどはフローへの課税です。ゆえに、フローが増大すれば税収が増加し、この税収によって国債を返済できるのです。これが理想的なケインズ派のおカネの流れです。

長期停滞経済の社会において不況になった場合も、政府が財政出動を行ないます。たとえば公共工事を行うと、そのおカネは国民の総所得を押し上げますが、そのおカネは消費ではなく貯蓄(ストック)に向かいます。ゆえに、家計の資産が1600兆円になり、企業の資産が950兆円になる。つまり政府が借金して調達したおカネが家計と企業の貯蓄(ストック)に消えるのです。すると消費と生産の通貨循環(フロー)は増えず、フローへ課税する税制であるが故に、税収も増えることはありません。そのため国債の返済は不能となり、財政支出は行き詰まるのです。

となれば、解決方法はすぐにひらめくと思います。フローへ課税するのではなくストックへ課税すれば良いのです。経済成長期の税制はフローへ課税することが正解でした。インフレを防ぐ意味でも有効でした。しかし経済状況は大きく変化し、長期停滞経済になりました。ならば税制を変更することはむしろ当然ではないでしょうか。

現代では、財政支出で増えるのはフローではなくストックです。ストックに課税すれば税収が増大し、これによって政府が継続的に財政支出を行う事が可能になります。


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  • コテヤン@どうやら管理人

「税制改革によってケインズ派は復活できる」のコメント一覧

  1. 1
    baiannmidareame やす  :

    なるほどですね。

    確かに仰る通りですね。グローバル化や非正規雇用の増大、成長戦略、TPPなどすべての政策が富裕層によりお金が回る政策となってますからね、それは必然的にストックが拡大するわけですね。

    確かにそういった面を考えなければ、単純に財政政策を実行すればバラ色の未来、ということにはならないですね。

    実はそういった面での考え方の違いが財政出動派にもあり、少し軋み始めているようにも感じます。

  2. 2
    noranekoma のらねこま  :

    >>やすさん
    >実はそういった面での考え方の違いが財政出動派にもあり、少し軋み始めている
    そうなんですか、それは気付きませんでした。差支えなければどのような軋轢が生じているのか教えていただけると参考になります。

  3. 3
    baiannmidareame やす  :

    >>のらねこまさん

    イヤイヤ、そんな大げさな事じゃないんですよ(汗)

    財政出動派にも、例えば成長戦略などには危機感を持っていない人もいたりとか、まぁ、そんな感じです。

  4. 4
    noranekoma のらねこま  :

    >>やすさん
    そうでしたか、安心しましたw。どうも最近は「共通点を見出して共闘する」よりも「違いを見出して分裂する」ひとが多い気がして心配なんです。とにかく財政支出です。ちなみにストックへの課税は「財源調達の方法の一つ」であって、必要条件ではないんですね。政策のポケットには手段が多ければ多い方が良いと思います。

  5. 5
    baiannmidareame やす  :

    >>のらねこまさん

    >「共通点を見出して共闘する」よりも「違いを見出して分裂する」ひとが多い気がして心配なんです。

    仰る通りです。

    ホント、情けない話です。

  6. 6
    コテヤン@どうやら管理人 コテヤン@どうやら管理人  :

    >>のらねこまさん
    記事を拝見して大変「あ、おもろいなぁ…」と思いました。
    ストックへの課税は拒否論というか拒否感がある人も多いようですが、そこら辺にどう説明していくか?というのが課題になりそうな気がします。

    >どうも最近は「共通点を見出して共闘する」よりも「違いを見出して分裂する」ひとが多い気がして心配なんです。

    これ本当にその通りで。
    多分言論活動をしているうちに名誉欲だとか自分の発信力への自惚れだとか、そういったものが出てくるのかもしれないですね。
    厳に自分を戒めねば…(汗)

  7. 7
    noranekoma のらねこま  :

    >>コテヤン@どうやら管理人さん
    ストックへの課税は税制の転換なんです、つまりフローへの課税偏重を解消することが目的なので、合わせ技としてフローの減税を行うべきと思うんです。例えば、金融資産への課税を行う代わりに、消費税の減税をします。たとえば3000万円以上の金融純資産(負債は控除)に対して累進で1~3%の課税を行い、消費税を5%あるいは3%に引き下げます。

    ちなみに統計によれば、住宅ローンなどを差し引いた純貯蓄(金融資産)でいえば、40歳以下の人は平均でマイナスです。50歳代でようやく1000万円に届く程度。つまり、若い人の大部分は課税対象対象外です。金持ちの高齢者ほど課税が大きくなるので、世代間格差の是正にもなるんですが、おそらく金満老人の大反対が・・・・。

    経世済民にとってどっちが得か冷静に考えていただきたいです。そして金融資産に課税して終わるのではなく、それを財政投資するわけです。言っちゃ悪いですが、使いもしないのに何億円も貯め込んでいるおカネの一部を吸い上げて公共投資するんです。有り余るほどあるのに、使わない方が悪い。そもそも富裕層がカネを使わないからこんな無茶な事をせざるを得ないのであって、金持がもっとカネを使えば金融資産に課税なんかしなくても、景気なんかすぐに良くなるわけです。

    実際に課税しなくても、「おらおら、カネ貯め込んでると課税するぞ!」と脅すだけでおカネが動くかも知れませんよw。

  8. 8
    yuruneko_blue ゆる猫  :

    ご無沙汰しております。

    先日、BSの「みんなのための資本論(2013年アメリカ制作)」という番組を見たのですが、それによると、格差が拡大していったのは、どうやら税制による影響が大きいようです。

    番組によると、1947年から1977年までの30年間にわたり、アメリカでは経済が大きく成長しただけでなく、所得格差もまた徐々に縮小していったそうです。教育が国家の最優先事項となり、質の良い労働者を生み出すため、多くの高等教育機関が設立されたそうです。それにより数多くの中間層が生み出され、その層がもたらす個人消費が、経済を長期にわたって安定させていたそうです。番組では、経済を安定させ、維持させることができるのは、この中間層を増やすこと以外にありえない、と断言しています。

    こういった中間層が失われることになった原因は、主にグローバル化と技術革新にある、と番組では説明しています。コンテナ船やインターネットなどの技術は、生産現場を世界中に分散させることを可能とし、それによりアメリカの多くの製造業労働者は職を失い、しだいに労働者全体の賃金が下がっていったそうです。その後、製造業が復活しても、かつての仕事はコンピューターやロボットに取って代わられ、労働条件が改善されることはなかったそうです。

    アメリカでは、1970年代終わりに労働組合に対する大々的な攻撃が次々に行われ、それ以来、労働者の賃金はほぼ横ばいになり、反対に富裕層の収入はうなぎのぼりに上昇していきました。技術革新により80年代から徐々に、工場の海外移転が進み、それに伴って金融業が強化され、労働者の給料が据え置かれたままGDPだけが伸びていったそうです。そのため富裕層が増え、それにより政治献金が増え、政治が腐敗していき、格差を広げるための政策が推進されていったそうです。

    1990年以降、金融業の規制緩和により、労働者の賃金はより低く抑えられるようになり、 株価と企業収入だけがどんどん増大していくようになったそうです。 企業のCEOと金融業者の賃金だけが跳ね上がり、にもかかわらず富裕層の税金は低く抑えられたそうです。

    1950年代~60年代半ばまで、富裕層の限界税率(その人に課せられる最高税率)は91%、富裕層は実際には収入の50%以上の税金を払っていたそうです。ところが、格差が広がるにつれて富裕層の税率は下げられ、 2010年には35%、超富裕層が実際に払っている税金は、収入の15%以下だったそうです。(収入の大半が資本運用益であるため、15%しか課税されない)一方で、一般の労働者の課税額の平均は、収入の33%だったそうです。

    税収が減った結果、政府は緊縮策を取らざるを得なくなります。公立の高等教育の予算が削られ、それを補うため、授業料が引き上げられていったそうです。番組の進行役、説明役であるロバート・ライシュによると、カリフォルニア大学のバークレー校では、60年代にはタダだった授業料が、70年代には、年間700ドル(現在の貨幣価値)、現在は年間15000ドルにまで跳ね上がっているそうです。労働者の賃金が据え置かれたまま、生活コスト(特に医療費と育児費)だけが増大していったため、2010年のアメリカでは、1970年代の倍以上の生活コストになっていたそうです。

    30年にわたり労働賃金が据え置かれたままインフレだけが進行していったため、中間層は生活を維持するために、3つの方法を編み出したそうです。1つ目は、女性の社会進出(共働き)、2つ目は長時間労働、3つ目は借金(住宅バブル)です。こういった中間層の努力により、経済はしばらくの間維持されてきましたが、やがてそれが限界が達したとき、バブルは崩壊し、2008年のリーマンショックへとつながったそうです。

    最後に、ロバート・ライシュは学生たちに対し、格差の拡大に対し、金持ちたちが常に非情に抜け目の無い行動を取ることを認めつつも、歴史は常に、前向きな社会改革に味方してきたことを力説します。失業保険、社会保障、公民権、投票権、環境保護…。社会の発展を疑うことがあったなら、これまでの人類の歴史を思い出して欲しいと。それは未来へと引き継がれていくのだと。大統領や労働長官(ロバート・ライシュは過去に労働長官をつとめた)にならずとも、君たちのひとりひとりが、自分の所属するコミュニティーを変え、やがてはそれが世界を変えるエネルギーになるのだと。

    …長文失礼しました。参考になれば幸いです。

  9. 9
    noranekoma のらねこま  :

    >>ゆる猫さん
    ご無沙汰です。テレビあまり見てないので参考になります。たまに、面白そうな番組をやってるのでテレビも見た方がいいんでしょうね。本読むより楽だし、カネかからないしw。

    経済の安定と成長には中間所得層が必要とは、まさにそうですよね。仮に企業が製品をどんどん生産しても、購買力のある中間層がないと消費は伸びないです。格差社会じゃ生産過剰は当たり前ですよ。人々が所得低下に対応するために女性の社会進出と長時間労働したって、いま日本がそれじゃないですかw。

    1960年代半ばまで最高税率90%だったんですか。これは推測ですが、当時は共産主義がまだまだ力を持ってましたから、国内で格差・貧困の問題を放置すると共産革命の口実にされてしまうので、警戒していたんじゃないでしょうかね。ところが今じゃ、やりたい放題。それで米国人が怒ってトランプとサンダースが出てきて大騒ぎw。

    所得税の最高税率引き上げも方法だと思います。でも、おかね大好きな人が多いので、所得税やストック課税のような税金じゃなくて、通貨発行で再分配の財源を調達する方が受け入れられやすい気がします。

  10. 10
    yuruneko_blue ゆる猫  :

    >>のらねこまさん
    こんばんは。この番組は非常に面白かったですよ。実は昨年の暮れにようやく自分専用の液晶テレビを買いまして(それまではブラウン管で見ていた)、それ以来、もともと好きだった海外のドキュメンタリーばかり大量に録りだめするようになったのですが、この番組はかなり当たりでした。

    >人々が所得低下に対応するために女性の社会進出と長時間労働したって、いま日本がそれじゃないですかw。
    あくまでアメリカの話なんですが、日本ともかなり共通する部分があるんですよね。なるほど、こういう道筋で格差が開いていったのか、と妙に納得してしまいました。

    >1960年代半ばまで最高税率90%だったんですか。
    番組では様々な分かりやすいデータを用いて、アメリカ経済の変遷を分析してるんですが、これに関してもグラフではっきりと示されておりまして、1930年の25%から急激に上がっていき、1935~50が80~90%、1950~64ぐらいまで91%、1965~81ぐらいまで約70%、1982~85まで50%、その後1986~2010までは30~40の間になっているようです。

    >これは推測ですが、当時は共産主義がまだまだ力を持ってましたから、国内で格差・貧困の問題を放置すると共産革命の口実にされてしまうので、警戒していたんじゃないでしょうかね。

    共産主義の話は出てきませんでしたが、たぶん関係あるんじゃないですかね。「映像の世紀」とかも見たんですが、アメリカでかなり共産主義勢力が強くなった時期があったそうですね。

    >通貨発行で再分配の財源を調達する方が受け入れられやすい気がします。
    そうですね。要は、格差があってもみんなが幸せに生活できるようになればいいんですよね。所得が少ない人、必要だけど利益が出ないような仕事をしている人に、政府が直接お金を配れるようなシステムになって欲しいです。

  11. 11
    noranekoma のらねこま  :

    >>ゆる猫さん
    >格差があってもみんなが幸せに生活できるようになればいいんですよね。
    全く同感ですね。にもかかわらず、最近の不毛な経済論争を観察していると疲れてしまいまして、最近は「生産の効率追求」と「分配の公平性」を1本のシステムに統合することが、そもそも間違いだと思う様になってきました。新自由主義は生産の効率性が高いのは明白なので勝手にやらせておいて、それとは別に公平性のある分配のシステムを構築し、分配はそっちでやるわけです。そうすればトリクルダウンなんか必要ないですから。それが通貨発行を中心とするシステムです。

  12. 12
    コテヤン@どうやら管理人 コテヤン@どうやら管理人  :

    >>のらねこまさん
    >最近は「生産の効率追求」と「分配の公平性」を1本のシステムに統合することが、そもそも間違いだと思う様になってきました

    本来は政治が公平な分配の圧力になり得るはずなのですけど、その政治が新自由主義者に毒されてますからねぇ…