関岡さんのTPPに関する動画を見て考えた。

この動画で、TPPそして、それに関連した交渉には、医療分野はもちろん、その他の分野についても大きな、危険だとの危惧がある。と関岡さんは仰っています。

例えば日本政府の説明では

TPP協定条文 第11章 「金融サービス」において、公的年金計画又は社会保障に係る法律上の制度の一部を形成する活動、サービス(公的医療保険を含む)、締約国の勘定、保証又は財源を利用して行われる活動、サービスには摘要されない事になっている。

だから、日本の公的医療保険は大丈夫だと言っているが

TPP 第11章2条3項において、ただし、締約国が自国の金融機関に対し、(a)又は(b)に規定する活動又はサービスについて公的機関又は金融機関との競争を行うことを認める場合は当該活動又はサービスについて規定する。とある。

つまり、日本には医療保険として第3分野アフラックなどのがん保険がある。彼らが自分達が日本の公的医療保険と競合すると訴えるかも知れない。そうなれば、これらの条文は適用されてしまう。

TPP協定条文 第9章 「投資」附属書 9-B 収用」において、公共の福祉に係る正当な目的(公衆の衛生、公共の安全及び環境等)を保護するために立案され、及び適用される締約国による差別的でない規制措置は極めて限られた場合を除くほか、間接的な収用を構成しない。

これをもっても社会保障は訴えられないと言っているが、「差別的でない」とはどういうモノを指すのか。「限られた場合」の「限られた」とは何を指すのか。がはっきりしない。

TPP協定条文 第26章 透明性及び腐敗防止 付属書26-A 医療品及び医療機器に関する透明性及び手続の公正な実施において、償還のための医療品又は医療機器の一覧への掲載を行わない旨の締約国の保険医療当局の要請により適用することが出来る。次にいずれかの手続きを利用可能なものとすること。
(1) 独立の審査の手続
(2) 内部の審査の手続、ただし、当該審査の手続において少なくとも申請について、実質的な再検討を行うことを条件とする

つまり、現在日本、フランス、カナダなどの国は医療品の価格決定に政府が関与し、医療品の高騰を防いでいる。この条文の申請とはグローバル製薬企業の事であって、彼らが医療品の価格決定にクレームを付ければ再検討しろ。という事である。独立の審査とは、政府の関与を許さないという事で、現在米韓FTAに含まれ韓国では医療品の高騰を招いている。

関岡さん仰る通りです。これは日本の国民皆保険制度にとって非常に危険です。下手をすれば日本の薬価決定にグローバル製薬企業がクレームをつけ、TPP条約によって日本政府の関与が出来なくなり、薬価が高騰するかも知れません。また下手をすればアフラックなどが日本の公的医療保険は我々と競争している、だからその差別的な制度は改めろと要求されるかも知れません。

どちらも長期的には日本の国民皆保険制度の維持を非常に困難にしかねない問題です。

・・・ところが、関岡さんはこの動画の冒頭でこう仰ったのです。

「TPP反対派の仲間の中にも日本の国民皆保険制度が崩壊するなどと言う者がいる。そこまではないだろう。極論の中に真実はない。是々非々で真面目に議論すべきだ。」

「今回のTPP交渉、今までの日本では考えられなかったほど、安倍政権は頑張った。甘利さんもよく粘った。日本の国益を守った。」

「TPPの関税撤廃率、他の国々は概ね100%なのに日本は89%だった。」

「心配していたISDS条項も、濫訴抑制、被申立国の異議を先決処理、審理の公開、投資家に立証責任、懲罰的損害賠償の禁止を規定させた。」

私には、強盗に襲われた家に宅配便の配達員が来て、後ろから拳銃で脅されながら対応している主人公、配達員に疑われないように荷物を受け取りながら、実は何とか異変を伝えようとする。よく映画などで見るやつです。あれに見えました。なんたって冒頭で安倍政権頑張ったなんて言いながら、内容はほとんどTPPに対する批判ですからね。

関岡さんの思いがわかる発言もありました。安倍政権としては(TPPは)対米協力のつもりだったのではないか。日米同盟の為の。とポロっと洩らされたのです。つまりは関岡さんの一番の関心事は安全保障にあるのではないかと思うのです。関岡さんは会社員時代、中国に行かれていた事があるようです。中国に関わった事がある人間は、極度に対中恐怖症に陥るか、いわゆる懐柔によって中国大好きになるかの両極端のようです。関岡さんは前者なのかも知れません。

ただ、中野剛志さんなどが仰っているように、いくらTPPでアメリカのゴマを刷ろうが、中国相手にアメリカが日本の為にしてくれるのは良くて経済制裁です。その事を対中恐怖症の人は分っていないのです。しかも、今度の大統領にあのトランプさんがなったとしたら・・・「自分の事は自分でなんとかしろ!」と言われるのが関の山でしょう。

まぁ本当に関岡さんが対中恐怖症なのかどうかは分りませんが、それくらい違和感のある動画でした。

さて、ここで私の考えを述べようと思います。

確かに関岡さんは安倍政権は頑張っただの、甘利さんは良く粘っただの、国益を守っただの、私の考えとはまったく違うことを仰ります。しかし、この動画を最後まで見て本当に安倍政権は頑張ったと思う人は少ないでしょう。むしろ「なぜ、TPPのような危険なものに入らなくてはならないのだろうか?」と疑問を持つのではないでしょうか。そう考えれば、この動画の意義はその疑問にこそあるのではないか、と思うのです。TPPなどという碌でもない代物をなぜ進めなくてはならないのか?頭の中がネオリベグローバリズムに染まったおバカさんではなく、関岡さんのような方がなぜそのような事を述べられるのか?その答えが安全保障にあるのだとすれば、今の日本の安全保障とは一体どのようになっているのかと考えなくてはならないでしょう。

関岡さんはもしかすると日本の安全保障の為には、アメリカに譲歩しつつ日米関係を強化しなければならない。と考えておられるのかも知れません。それが正しいのかどうかも私には分かりません。ただ、私が考えるのは、中野剛志さんが仰られる通り、アメリカは覇権国としての力を弱めつつあり、しかも核保有国の中国と戦う事はありえない、まして日本の為になど100%ありえない。良くて経済制裁止まりだろう。という事です。

では、どうするか。日本はアメリカだけではなく多くの国と安全保障強化の為、協力出来る体制を整えなくてはならない。TPPのような日本の国力を削ぐようなバカな事は絶対にやってはならない。結局、内需を拡大し国力を高め、自分達で自分達を守る国になるしか方法はないのです。

関岡さんのこの動画は、その違和感ゆえに、戦後日本の抱える問題を改めて考えさせてくれました。