国力の源

国家は、とりわけ民主国家はナショナリズムに訴える事で国民の資源を動員する。

ナショナリズムとは、同じ国民に対して抱く同朋意識や共感の情である。

ナショナリズムを抱く国民全体が団結・連帯して行動することによって生み出される力こそが「国力」である。

危機を克服するためには、国家の機能とそれを支える力、すなわち「国力」が必要となる。

これらの言葉は中野剛志さんの「国力とは何か」という著書の中に記されているものです。

私はこれらの言葉を見たとき、冗談抜きに「日本は最強国家になる可能性がある!」と感じました。

あれは東日本大震災からどれくらい経った頃だったでしょうか。まだまだボランティアの方々が続々と東北に向かわれていましたし、募金もまだまだいたるところでされていました。日本全体が東北の方々のために何をすべきかを真剣に考えている。私はそう感じていたのです。

しかし、それは誤りだったことを、また中野剛志さんの言葉で知らされました。チャンネル桜の討論の中において、中野さんは日本人は根本的にダメだ、東北は見捨てられた、東北復興を何を置いても為さねばならないのに、財源の話からこの国は始めた、そして何か月たっても何もしない。さらには東北には農家が多いのにTPPの議論を震災など無かったかのように始めている、日本人はなんと冷酷で身勝手で利己的で現状の認識も出来ない民族だと証明されたと仰ったのです。正直、ショックでした。その当時私は何も知りませんでした。政府が復興のために財源の議論を始めた時も、そんなものかと思っていたのです。知らなかったから、政府がやっているから、そんなものだと思っていた・・・情けない話です。

私は東北の方々に同朋意識を持っているつもりでいました、と言うよりそんなに深く考えた事もなかったわけですが、誰かからそう聞かれたら、あるに決まっている。と答えたでしょう。それほど私の中では日本国民として一体感を感じていた訳です。しかし、その思いは発揮できなかった訳です。(もちろん寄付はしましたが、根本的な国家の一員として同朋を助ける事にはならなかったのです。)

ナショナリズムとは、同じ国民に対して抱く同朋意識や共感の情である。とありましたが、それを担保するものは何でしょうか。人々は何故同じ国民に対し同朋意識や共感の情を持つのでしょうか。そもそも「国民」とは何でしょうか。世界では「国民」とは日本のように民族的にきわめて近い集団であることの方がまれで、多くの違った民族によって構成されている事の方が多いわけです。中野さんの著作では「国民」とは「想像の共同体」であると言います。「自分達は同じ集団に属する同朋だ」と想像し、意識しなければ「国民」と言う概念は存在しないのです。そうすると、なぜ、そのように想像するのかが重要になってきます。

共通の歴史、言語、習慣、文化あるいは領土などの客観的な背景がそれらの思いを強化するわけですが、現在の国民国家にとっては人々がその集団、つまり国家は自分達国民のためにある存在だと感じる、これは個人的な便益の話ではなく、これから連綿と続く未来を、自分達の子や孫、子孫が幸せに受け継いでゆけると信じられるから、そのように想像し意識するのではないでしょうか。だからこそ、顔も見たことがない、同じ国民であると言う「想像上の思い」だけで、彼らを助け、そして自分達にも何かあれば、彼らは助けてくれるだろうと信じる事が出来るわけです。

日本は国土を海に囲まれ、共通の歴史、言語、習慣、文化を共有し、しかも格差の非常に少ない、かっては一億総中流社会と呼ばれた国を作り上げてきました。しかも社会保障は充実しており、日本の国民皆保険制度などは世界中から垂涎の的となっています。まさに日本人にとって現在の日本は自分達国民の為にある。と心の底から思えた共同体だったのです。それこそが日本という国の強さであり、私が日本は世界最強の国になることが出来ると感じた所以でした。

ですが、そうであるにも関わらず、東日本大震災での対応は中野さんの指摘通りの有様となってしまいました。それはなぜなのでしょう。

ナショナリズムを抱く国民全体が団結・連帯して行動することによって生み出される力こそが「国力」であるならば、日本人はナショナリズムを抱き団結、連帯できることは間違いありません。つまり「国力」でいえばその能力は非常に高いと思います。ですがその能力(国力)を使いこなせていないのです。東日本大震災の復興計画において政府が、なんとしても被災地を救済せねばならないと、申し訳ないが日本国民の皆さん、復興のために将来の負担が増すことを我慢してください。と言えば私たちは喜んで賛同したことでしょう。

つまりは日本の、この強力な国力を使いこなすだけの知識、覚悟、そして道義が足りないのです。

知識が足りないから、復興のためには財源をまず確保しなければならないと思い、覚悟が足りないから、被災し苦しんでいる同朋がその財源を確保するまでの期間、苦しんでいるのを見て見ぬふりをしたのです。そして道義が足りないから、TPPなどの話を始めて平気な顔をしていられるのです。

そして今、その足らざることによって、日本の国力は日々減退しているのです。

私たち日本人は、日本の持つ強力な国力について知らねばならないのです。そして、それを守るにはどうあるべきかを考えなければならないのです。日本の国力の源は何なのか?それをきちんと認識しなければなりません。失ってからでは遅いのです。


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