日本の国土条件という要素は経済論に必要

先日、安全保障型経済分配論という非常に「なんだこれは?なんだなんだ?」という論を書きました。
その中で筆者は「どうも分配論には安全保障という概念が考察されていないのでは?」という旨の考察をしました。

上記を詳しく本日は述べていきたいと思います。

【供給能力が壊滅する危機的状況はある】
日本で過去に「壊滅的な供給能力の低下が起きた事例」としてぱっと思いつくのは「第2次世界大戦」ではないでしょうか?
日本の大都市はことごとく空襲や原爆によって焼け野原にされ、日本の供給能力、物資生産能力は最低レベルまで落ち込みました。
そして供給能力が壊滅的に破壊されたからこそ、敗戦後のインフレーション(しかもかなりの率の)があったわけです。

また例えばABCD包囲網もそれに当たるかもしれません。
包囲網により石油等々の物資が入ってこず、生産しようにも生産ができない状況になるかもしれない、という非常に危機的な状態でした。
まさに必要な物を作れずに国民の生命そのものを維持することすら出来ない、そんな状態になるかもしれないと予想されました。
だからこそ日本は自存自衛のために戦争に打って出たという解釈も成り立つわけです。

「日本は平和国家だからもうそんなことは起こらない」
というような主張もあると思いますが、決してそんなことはありません。
それどころか上記と同レベルに近い危機が現在の日本に迫っているのは明々白々なのです。
そして一度、危機的状況を迎えれば日本の供給能力は壊滅とまでいかなくても、必要な物を作れない水準に落ち込むかもしれないのです。

【日本の国土条件】
ほぼすべての方が同意いただけると思いますが日本は自然災害大国であります。
間近で言えば鬼怒川での洪水被害は甚大でしたし、例えば私自身を襲った災害はあの有名な「阪神淡路大震災」であります。
筆者は当時中学3年生だったのですが、あの時の恐怖は未だに忘れられません。

大雨、震災、津波、土砂崩れ、台風等々様々な災害に日本は未だに悩まされ続けているわけです。
ヨーロッパの建物が石造建築なのに対して、日本の建物が木造建築だったのは日本が昔から災害大国であったからだと思われます。
石造りは頑強ですが建てるのにも時間がかかります。木造は頑強ではないですが修復や建て直しも石造りより早く済みます。

【今そこにある危機。南海トラフ地震、首都直下型地震】
南海トラフ地震や首都直下型地震は皆様も一度くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか?
まずこの2つですが地震学者によりますと「今後30年以内に7割の確率で起こる」のだそうです。
また南海トラフ地震が起こった際に首都直下型地震が連動する確率も非常に高いのだそうです。

南海トラフ地震を政府が行ったシミュレーションで見ますと以下のようになります。
・マグニチュード9.1程度の地震になる可能性がある(と想定している)
・死者は32万人に昇る可能性がある
・被災者は700~1000万人にのぼる
・GDPの毀損はなんと220兆円(日本のGDPの42%が毀損される)

東北大震災を思い出していただきたいのですが、あれより更に大きな規模の地震が「日本の中枢の経済圏」を襲う、これをご想像いただきたいと思います。
さらにこれに首都直下型地震が加わるとどうなるか?

最悪、官邸も機能しなくなり官邸が機能しないので自衛隊すら機能しない。
また日本の3割近い人口を占める東京が被災するとどうなるか?一瞬にして「日本という国の機能」が失われる姿をご想像下さい。
これが今そこにある危機であり、危機管理の観点から言いますと「最悪レベル」を予想し、それに備えるというものが「安全保障」だとご理解いただけるのではないでしょうか?

【最悪レベルの災害が襲った場合に備える】
上記南海トラフ地震・首都直下型地震を想定した場合に必要なことは何か?と考えていきますと以下になります。
・人口や経済の地方への分散
・上記をするために地方へのインフラ投資
・インフラの冗長化、2重化
・防災・減災のために耐震基準の見直し
・東京一極集中ではなく、複数の経済エンジンを持つこと

等々、他にもいろいろ考えられますが危機的状況の被害を抑えること、被害を受けた後の復旧、復興を早期になし得る体制にすることこそが求められるわけです。

【経済論と日本の国土条件】
おおよそ様々な経済論がありますが、基本的に経済論は「平時」しか想定しておりません。

筆者は基本的に公共事業論の立場を取らせて頂いておりますが、他の論(分配、インタゲ等々)の有用性も理解しているつもりです。
また経済論の多くは「将来あるべき社会」を語れる大変に興味深いものばかりであります。
(今のらねこま様の「ロボットと人口機能は人類を幸福にするか」を読んでおりまして、まだ途中ですがこれまた面白いのです)

しかしながら是非とも様々な経済論に「日本の国土条件」という要素を加えていただきたいとご提言さし上げるものです。
経済、すなわち経世済民とは国土の上で生きる我々の学問だと思うのです。恐らく国(国土条件や文化等々)によっても最適解が変わるのだと思います。

以上色々とご提言させていただきました。最後に灯火様からご提言いただいたワンフレーズを使って終わりたいと思います。
「公共事業こそが、最高の防災対策!」


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コテヤン@どうやら管理人
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「日本の国土条件という要素は経済論に必要」のコメント一覧

  1. 1
    noranekoma のらねこま  :

    なるほど、一般論としての経済システムについては考えますが、日本に特異的な国土条件を織り込んで考えることはあまりしていませんから、これは参考にさせていただきます。平時の一般論を検討したうえで、さらに日本の場合はどうすべきか、という具体的な検討を加えることも考えたいと思います。

  2. 2
    コテヤン@どうやら管理人 コテヤン@どうやら管理人  :

    >>のらねこまさん
    どもです~前々から色々気になってたので、こういうコラムになりましたです。
    多分なんですが経済学方面の方ってあまり「政治色」とかは無い気がするんですよ。
    安全保障って完全に政治色の強いテーマですので、取り上げる人が少なかったのかなぁ?とか素朴に思ってます。

    ・・・・私は政治色が強いテーマのほうが好きでw
    逆に経済の論理とかはちょっと疎い方でして。
    まるでフレミング理論?一本足かな?ってそれフラミンゴや!マンデルフレミング理論や!というどうでもいい方向にいつも行ってますw

  3. 3
    noranekoma のらねこま  :

    >>コテヤン@どうやら管理人さん

    まったくその通りでして、自分は政治があまり詳しくないですし興味の中心でもないんです。それどころか自分は経済理論というより経済哲学のような感じですから、アカデミズムでもない。そこで、ここに来て皆さんがどんなことを考えておられるのか、貴重な情報をいただいております。

    >マンデルフレミング・・・

    いや~、自分も似たようなもんです。今までは閉鎖系の経済について主に考えてましたから、マンデルフレミングなんじゃそれ、お前は右手か左手かなんて状態です。グローバル経済の本当の正体については、これから勉強です。

  4. 4
    コテヤン@どうやら管理人 コテヤン@どうやら管理人  :

    >>のらねこまさん
    なるほど~私むかしハイエクの本を「新自由主義がダメなものなら、なおさら新自由主義を覚えてみないと」とか思って買って3ページすら読まないうちにどこかに行っちゃいましたw
    やはり人間興味の中心のものじゃないと、中々手がつけられないというか…

    本コラムのような地震に対する安全保障は、藤井聡先生が源流でして私もたへん尊敬申し上げる先生の一人です。もはやファンと言っても過言じゃないくらいw
    もし少し興味がお有りなら「国土強靭化計画」で検索して頂けたら。おすすめは動画の方です。
    (この先生べしゃりも面白い&熱いのでw)